遺言書を作成する場合、遺言執行者を定めておくことができます。また、遺言執行者の指定を第三者に委託することもできます。(民法第1006条)

遺言執行者とは、文字通り、遺言書の内容を執行する人です。

では、遺言執行者は必ず必要でしょうか?

まず、執行する遺言の内容が以下のものである場合、遺言執行者しかできません。

遺言執行者が必須のもの

  • 嫡出でない子の認知(民法第781条2項)
  • 相続人の廃除(民法第893条)
  • 廃除の取消(民法第894条)

実際には、これらを遺言書に記載するケースは、多くないでしょう。
それならば、普通は遺言執行者などいらない、かと言えば決してそうではなく、以下のようなメリットがあります。

メリット1:手続きの負担の軽減

預金の払戻手続きなど、遺言執行者がいないと、相続人全員の署名捺印が必要になったりと、手続きが面倒になります。遺言の内容に相続人全員が納得できていない場合などは、せっかく遺言があるのに、なかなか手続きができない、という事態にもなりかねません。
(遺言執行者がいれば、遺言執行者が単独で手続きできます。)
※預貯金の相続手続きは、金融機関により異なります。
※不動産の所有権移転登記申請は、包括遺贈の場合を除き、遺言執行者の職務ではありませんので注意が必要です。

メリット2:精神的負担の軽減

全ての相続人が満足できるような遺言書であれば、言うことありませんが、実際にはそうもいかないことも多いでしょう。遺言執行者が介在することにより、相続人間の不平や不満にワンクッションが入ることが期待できます。
遺言執行者は、親族でも、相続人の誰かでもなることができますが、こういう場合は行政書士などの専門職を指定することも検討するとよいと思います。
(遺産の種類によっては手続きが専門的になる場合もあります。こういう方も専門職の活用をおすすめします)

なお、遺言執行者がいない場合、またはなくなった場合は、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立をすることができます(民法第1010条)

とはいえ、遺言執行者は遺言書で指定することが一般的です。執行を誰に託すのが最善か、遺言書を作成するときにはよく考えてみることをおすすめします。
当事務所では、お客様の実情に合わせた遺言書の起案、ご相談、また遺言執行の引き受けを承っております。
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今は大分落ちてしまいましたが、ゴールデンウィーク前半、段葛のツツジがきれいでした。
段葛のつつじ

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